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高森明勅
2012.2.20 14:26

陛下のご快癒を祈り奉る

2月19日、隙間を見つけて皇居坂下門に設けられた記帳所に赴き、謹んでお見舞い記帳をさせて頂いた。

最寄り駅から向かう途中、「観光客が随分いるなぁ」と感じていたが、その殆どの人が、記帳所を目指していたのには驚いた。

皇居外苑では、行きも帰りも人が途切れない。

被災地からも、多くの方が来られていたようだ。

老若男女様々な人が多数、来ていた。

一見して「右翼」という感じの人はいない。

記帳では出身の都道府県名と氏名のみを書く。

私の前の方は奈良県から来られていた。

後で聞いたところでは、私の京都の知人も、同じ日に上京していたらしい。

記帳した後、「やっとスッキリしたー」と声に出していた人がいた。

やや不謹慎な印象を与えかねない言い方だが、よほど陛下のお身体を案じていたのに違いない。

記帳したからといって、陛下のご快癒に直接、繋がるわけでは勿論ない。

それはご本人もよく分かっているはずだ。

それでも、居ても立ってもいれない気持ちで皇居まで来て、記帳を済ませると、ほんの少しだけ気が晴れたのだろう。

その気持ちは、私にもよく分かった。

震災後の陛下は「天皇は斯くあるべし」というお姿を、より鮮烈にお示しになって来られた。

そのお姿は、些か不穏当な表現を許して頂けば、殆ど死を賭しておられると申し上げても、敢えて過言ではなかろう。

私なぞは、その悲壮なご覚悟を拝し、涙ぐみそうになってしまう。

しかし、そうした感覚は、どうやら私だけのものではなかったようだ。

そうでなければ、この日、眼前に見た皇居の光景は、説明がつかないだろう。

陛下の1日も早いご本復を衷心より祈り上げる。


高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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